MENU

WHAT IS Fusic DOING?Fusicってなんしようと?

宇宙は理系だけのものじゃない。国際教養大学で「宇宙産業のバリューチェーン」を講義しました!

2026.09.24

イベントレポート

皆さんこんにちは、宇宙事業開発担当の武田です。


2026年9月9日(水)、母校である国際教養大学において宇宙講義をしてきました。


国際教養大学(AIU)は、秋田県秋田市にある公立大学で、2004年に開学しました。全授業を英語で行い、留学を必修とするなど、国際色豊かなリベラルアーツ教育(※)で知られています。
※リベラルアーツ教育:幅広い分野を横断して学び、物事を多角的に考える力を養う教育


「リベラルアーツの大学で、なぜ宇宙事業?」と思われるかもしれませんが、昨今、国内外で宇宙産業が急速に拡大する中、求められる人材像が劇的に変化しています。ロケット工学や衛星技術といった理系知識だけでなく、ビジネス、国際関係、安全保障、法規制、さらには環境問題まで、複雑に絡み合うテーマを横断して考えられる「学際的な視点」こそが、いま渇望されています。


そんな背景から、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)の取り組みである「SX Meisterプログラム」の一環として、この秋セメスターに新設されたのがFuture Frontiers Program「これからは宇宙だ!宇宙人材養成基礎プログラム」です。構想まで約1年かかったこの講座は、宇宙ビジネスや天文学、安全保障、環境など、各界の第一線で活躍する講師陣がリレー形式で教鞭をとる意欲的な取り組みです。


ありがたいことに私も講師の1人としてお声がけいただき、記念すべき第1回の教壇に立たせていただきました。




第1回は「宇宙産業の概観とValue Chain」をテーマに、磯貝副学長とともに講義を担当しました。また、一般社団法人SPACETIDE代表理事兼CEOの石田真康氏から、ビデオメッセージも寄せられました。

この講義のお話を聞いたときにどのくらいの生徒が集まってくれるのか不安もありましたが、集まったのは、学部1年生から4年生、大学院生、さらには留学生まで約30名。教室に入ってくる学生たちに話を聞いてみると、専攻も参加動機も実にバラエティ豊かで、異なる背景を持つ仲間が同じ空間で議論を交わす環境から、AIUらしい国際色豊かで学際的な雰囲気を感じることができました。


最初に、講義のゴールとして以下の3点を設定するところから始めました。


1. 宇宙産業の勢い(モメンタム)を理解する

2. 産業の課題とギャップについて考える ― 日本と他国を比較してみる

3. 宇宙関連ビジネスにおける自分自身のキャリアを思い描く


今回私が担当したのは、宇宙産業の「バリューチェーン」についてのセッションです。
宇宙ビジネスというと、どうしてもロケットの打ち上げや衛星の製造といったバリューチェーンの「上流」に目が行きがちです。しかし実際には、宇宙から送られてくる膨大なデータを地上で受信・加工し、誰もが使える形に変換して初めて、私たちの社会やビジネスに価値が届きます。そこで参加した学生たちに、こんな問いを投げかけてみました。
「皆さん、今朝起きてから、もう宇宙を使いましたか?」
スマホの地図アプリを開いた、天気予報をチェックした、通信を使ったなど、実は私たちはすでに宇宙インフラなしでは1日たりとも生活できない世界に生きています。そんな身近な生活と宇宙の結びつきを体感してもらいながら、宇宙産業にとどまらず、あらゆるビジネスの大枠を捉えるための「バリューチェーンの思考法」を共有しました。
「SpaceXの名前は知っているけれど、宇宙産業全体に触れるのは初めて」という学生も複数いたため、まずはリアルな市場規模のデータから切り出しました。世界経済フォーラム(WEF)で発表された宇宙経済(space economy)の市場規模は「2035年に1.8兆ドル」というインパクトのある予測です。改めて数字を見ると宇宙産業の成長性や規模感に驚いた様子でした。中には、この数字以上に大きくなると予測する学生もいたのが印象的でした。
政治や国際関係を学ぶ上級生からは、「宇宙産業と安全保障・軍事との結びつき(デュアルユース)」についての本質的な問いが投げかけられました。ビジネスとしての宇宙だけでなく、地政学リスクや安全保障という避けて通れない現実をしっかり捉えようとする視点には、まさにリベラルアーツを学ぶ学生ならではの鋭さだなとこちらが感心させられました。
また、これから海外留学を控えている学生からは、「自分が留学する予定の国では、いまどんな宇宙産業が動いていますか?」という具体的な質問も。講義のゴールに掲げた「他国との比較から日本の課題を考える」という視点を、早くも自分自身の次のステップと結びつけて捉えてくれていたのがとても印象的でした。

当日講義に同席されていた学長からは、国際教養大学として今回の講義を皮切りに、外部スピーカーも交えた複数回の講義を通じて、宇宙産業や宇宙利用についての問題意識を高めていきたいというお話がありました。
これまで宇宙を自分とは少し距離のある「理系の専門分野」だと感じていた学生にとっても、今回の講義が、リベラルアーツの視点から宇宙について考え、自分の学びとの接点を見つけるきっかけになっていたら嬉しいです。
こうした学際的な視点を持つ人材が業界に増えていくことは、私たちのような宇宙事業に携わる企業にとっても、一緒に業界を盛り上げていける仲間が増えることを意味します。
卒業生の一人として、母校でこうした新しい取り組みが始まったことを嬉しく思うとともに、これからもその歩みを楽しみに見守っていきたいと思います。