MENU

STORIESお客様の声

自動運転用地図の制作にAIとクラウドを!高い技術力と提案型の開発による伴走 株式会社ゼンリン

2023.02.10

AI・機械学習

株式会社ゼンリン

 https://www.zenrin.co.jp/


インタビュイー:

 研究開発室 岩田 繁幸 様




今回のインタビューでは、2021年に実施した、
AWSを利用した簡易版MLOps推論基盤構築プロジェクトについてお伺いさせていただきます。

プロジェクト自体のお話をする前に、まずはゼンリン様で制作されている「自動運転向けの地図」について教えていただけますか?

岩田様)「自動運転向けの地図」には、道路標識や信号機、車線といった道路情報が高精度かつ3Dで整備されています。
自動運転車両には、AIやセンサーがついていますが、それだけで自動運転を実現することは難しく、地図が必要となります。
例えば、前方の車両によって信号機が見えない場合などに、地図があることによって情報を補完することができます。
地図は、自動運転において非常に重要なんです。

ただ、この地図は高精度な分、制作時間やコストがかかってしまうことが課題でした。
地図の制作過程では、カメラやレーザースキャナといった計測装置搭載の車両で収集した
三次元の点群データ・画像データを処理する必要があります。
また、工程処理も多く、非常に手間がかかっていました。
今後、地図の制作、ひいては自動運転の取り組み自体を拡大させていくためには、この作業を効率化することが必須でした。

そのために私たち研究開発室では、ディープラーニングによって道路標示・路面の情報から横断歩道や区画線を認識したり、
道路標識や信号機をオブジェクトとして自動認識したりといった技術、つまりAIの研究開発をしています。




そのAIをより活用するための推論基盤を構築させていただいたのが、今回のプロジェクトでしたね。

岩田様)はい。研究によりAI自体の性能は上がってきていたのですが、そのAIをどう運用していくかについて課題がありました。
AIは、研究時点で高い性能であっても、実際の現場に持ち込むと性能が劣化することもあり、監視やチューニングが不可欠です。
こういったAIの継続的な開発・運用の手法を「MLOps(エムエルオプス)」と呼ぶのですが、そのための基盤が必要だと感じていました。
またあわせて、AIの処理をクラウド化し、いつでもどこからでも利用できるようにしたいという要望もありました。
計測車両で取得したデータは、物理的にセンターに持ち帰る必要があったのですが、
クラウド化することで、どこからでもアップロードができたりといったことが実現できないかと考えました。

ただ、当時はMLOpsやクラウドの知見が乏しく、推論基盤の構築を効率よく行うには、外部の力を借りる必要がありました。
その際に知ったのがFusicさんですね。


Fusicを選んでいただいた理由はどういったところでしたか?

岩田様)パートナー企業の選定にあたり、技術や実績はもちろん、柔軟に対応いただけるかどうかも重視していました。
というのも、先ほどお話したように、お願いしたい技術領域に私たちがあまり詳しくなかったため、
要件をきちんとお伝えできるか不安に感じていたからです。
そのため、対話しながら一緒に設計していくような、コンサルティングとしての関わりを求めていました。
Fusicさんはそれらの条件を満たしていましたし、実際のプロジェクトでも期待通りの動きをしてくださいました。




ありがとうございます。どういった場面でご期待に応えられましたか?

岩田様)要件を整理する際に、例えば「同時に何枚画像を処理できる必要があるか」
「どれくらいの時間で処理が完了する必要があるか」といった点を詳細に決めていく必要があるんですが、
Fusicさんのほうから前のめりに色々と質問や提案をしてもらったおかげで、
不慣れな領域であってもスムーズに検討することができ、どんどん設計が進みました。


Fusicのメンバーへの印象はいかがでしょう。

岩田様)高い技術力を土台とした、提案型の開発をしていただけるという印象です。
メインで関わってくださったエンジニアの鷲﨑さんは、最近の論文や技術トレンドをふまえた提案をこまめにしてくれます。
とても誠実だし、技術に対してしっかりアンテナを張っているんだな、と感じますね。

鷲﨑)ゼンリンさんとはすでにいくつかプロジェクトを実施しているんですが、
その都度Fusicに対して「よかった点」や「改善してほしい点」をフィードバックしてくださるんです。
わたしたちのことをパートナーとして見てくださっているんだなと嬉しく思っています。
加えて、個人的には「自動運転」という、未来に価値あるプロジェクトに関われることがとてもモチベーションになっていました。
もちろんお仕事ではあるんですが、「面白そう!」と一緒にワクワクしながら取り組んでいます。




本プロジェクトの成果についてお聞かせください。

岩田様)実は、ゼンリンにおいて社内の地図制作工程への「AI導入」と「クラウドインフラ(AWS)の導入」は
今回のプロジェクトが初めての挑戦だったんです。
そのため、ゼンリンにとって非常に意味のあるプロジェクトとなりました。

クラウドインフラの導入においては、コストや処理速度、
セキュリティ面で社内の理解を得るために心を配り、無事に導入することができました。
クラウドはスケールも自由自在で、AIの処理に最適化されたものもあり、導入できて良かったです。

また、地図制作の現場にAIが持ち込まれたことにより、今後業務に対する考え方自体が変わるように感じます。
これまではオペレーターによる手作業だった業務が、AIによる処理が基本となり、人間はその確認を行うだけでよくなります。
そしてAIがミスしていたとしても、それを再学習させることで常に処理が改善されます。
人の役割が変わっていくように感じますね。


今後の展望についてお聞かせください。

岩田様)何よりも「自動運転向け地図をいかに拡大していけるか」を第一に考えていきたいです。
そのために必要となる技術には様々なものがあります。
本プロジェクトのトピックだったMLOpsやクラウドはもちろん、
Fusicさんとの別プロジェクトではエッジAI(*1)の研究にも取り組んでいます。
地図をリアルタイムでスムーズに拡大させていける仕組みを、これからもFusicさんと一緒に作りあげていきたいですね。
(*1)エッジAI:デバイス側で処理を行い、クラウドとの通信を減らす仕組み。