2025年4月22日、生成AIの導入・活用に関心がある企業の担当者や経営層に向けて、生成AIセミナーを当社のオフィスにて開催いたしました。共に福岡に本社を置く「QTnet × Fusic 」による共同主催で、業務で生成AIを活用するための実践的なポイントを解説し、40名以上の方々にご参加いただき、大変盛り上がりました。このイベントレポートでは、とても中身の濃い生成AIセミナーの内容を詳しくご紹介していきます!
▼イベント概要
「生成AIを本当の戦力に変える! 最新トレンドと実践活用法」
日時:2025年4月22日(火) 16:30〜19:00
場所:株式会社Fusic オープンオフィス
登壇:
株式会社QTnet AI事業部 スペシャリスト 佐伯 和広 氏
株式会社Fusic 事業推進部門 エバンジェリスト 室井 慎太郎
▼セミナー内容
- AI事業に取り組む会社が薦める生成AI活用術
- これからのビジネスに生成AIをどう活かす? 最新トレンドと実践例
- パネルディスカッション「現場のリアルを深掘り! 生成AI導入の壁と成功の鍵」
- ネットワーキング
QTnet が提供する「QT-GenAI」の強みと企業向けの導入・運用ノウハウ、生成AIの最新トレンドや、Fusicが得意とする「社内データを活かした導入事例」もご紹介しました。
AI事業に取り組む会社が薦める生成AI活用術
登壇:株式会社QTnet 佐伯 和広 氏
マルチ生成AIプラットフォーム「QT-GenAI」は、福岡県などの自治体や九電グループ、金融等の様々な業界で活用されています。
特に多いユースケースは、下記の4つです。
- 専門家への相談
- 文章校正
- メール文章作成
- コーディング
他にも、文章整理・翻訳・Web検索・専門家による解説・文章要約・言い換え・ブレスト・文字起こし・下書き作成などがあります。
QT-GenAIの活用例として、実際に画面を動かしながら、業務効率アップが期待されるデータ利活用の様子をデモンストレーション形式で説明されました。
QT-GenAIの業務効率アップ活用例
・仕様書比較:複数の仕様書の相違点を明確にする
・文字起こし:画面キャプチャや録音データを瞬時に文字起こしする
・社内チャットボット:社内データをアップロードし、社内専用チャットボットとして利用
・審査ボット:過去のノウハウをアップロードし、簡易審査ボットとして利用
また、QT-GenAI 利用企業の状況、失敗・成功事例も共有いただき、プロンプトを設計・最適化する技術(プロンプトエンジニアリング)をより簡単にする機能も紹介されました。
QT-GenAI 利用企業の状況
- 利用者の約60%が、10〜50%の時間短縮を実感
- 若年層が積極的に利用
- トライアル利用後、継続利用希望が100%!
- 利用者の約80%が、成果物の質に対して30%以上の向上を実感
失敗事例
- ネット検索する思考から脱却できず、導入しても利用しない(導入始めが大事!)
- AIへの過度な期待で失望し、利用しない(利用者の期待値を下げる必要もあり)
- リテラシー不足によってAIを使わない(AIに対する漠然とした不安感や、効果的な活用への理解度不足)
成功事例
- コミュニティの形成(組織内での成功事例や最新動向の共有が進む)
- 社内コンテスト(活用アイデアが出てくる)
- 各部署での勉強会の実施(メンバー間の相互理解)
- キャズムを超えるまで利用し続けたことで社内に定着(口コミで徐々に広がるまで)
- 社内データを活用し、業務効率アップ
※キャズム:「深い溝」という意味で、顧客に新しい商品やサービスを浸透させる際に発生する大きな障害、乗り超えるべき溝のこと。
生成AIに関する新技術は日々進化しており、現在は生成AI活用の最適化から「データ連携&業務フロー」に落とし込んでいくフェーズとのこと。今後は、AIエージェントによる自動化でAIエコシステムの構築が進み、企業の競争力が大きく向上することが期待されています!
これからのビジネスに生成AIをどう活かす? 最新トレンドと実践例
登壇:株式会社 Fusic 室井 慎太郎
生成AIの最新トレンド
ここ半年の大きな技術ハイライトで、下記の2つが挙げられました。
①DeepSeek「モデル開発の低コスト化・民主化」
- オープンソースでLLM(大規模言語モデル)が使えるようになった。
- Knowledge Distillation(知識蒸留)を使い、開発工数を大幅に削減して開発された。
↓
- 誰もが自社専用のモデルを開発できる土壌が作られた。
- AI市場のサプライヤーは自社の技術を使って、いかにプラットフォーム・アプリケーションを提供するかの流れに変わってきた。
※DeepSeek:中国の人工知能研究所であり、オープンソースの大規模言語モデルを開発している。高性能チップを使わない低コスト開発でも生成が可能であることから世界を驚かせた。
②MCP(Model Context Protocol)
- これまでの生成AI利用は受動的で、ユーザーがプロンプトをうまく作る必要があったが、より能動的になり、プロンプトの文脈を理解した上で提案するなど、広範囲に制御できるようになった。
※MCP:AIアシスタント(チャットボットや自動化エージェントなど)が、様々な外部データやツールにアクセスするための共通のルール(プロトコル)。
今後の生成AI利用のポイント
今後のポイントで、下記の技術も挙げられました。
- RAG(Retrieval-Augmented Generation)検索拡張生成
- 生成AIを使ったアプリケーション開発
- エンべディング(Embedding)埋め込み表現
- ドメイン特化型モデル
※RAG:大規模言語モデル(LLM)がテキストを生成する際に、外部のデータベースやWebサイトなどの情報源から関連情報を検索し、その情報を使って回答を生成する技術。
※エンべディング:テキストや画像、音声などの様々なデータを、コンピュータが理解しやすい数値形式に変換する技術。
また、宇宙産業向けに提供したRAGチャットアプリの事例を紹介。自社が属する産業の特性や自社の業務を高解像度で分析し、どのように生成AIを活用するのが最も良いかを考える必要があることも説明されました。
生成AIを使ったアプリケーション支援
▼開発事例:新川電機様の新規事業支援
生成AIを活用した「工場の機器保全スマートダッシュボード」構築PoC
エンべディングとドメイン特化のユースケース
▼グローバルAIスタートアップとの業務提携
グローバルAI企業「Upstage」と生成AI分野における戦略的提携に合意
九州のDXを推進していく上で、非常に親和性の高い技術スタックとして、今後の展開がとても楽しみです。
パネルディスカッション「現場のリアルを深掘り! 生成AI導入の壁と成功の鍵」
パネルディスカッションでは、下記のテーマをもとに登壇者それぞれにお話を伺いました。
パネルディスカッションのテーマ
- RAGって、実際どうなの?
- 生成AI活用はSaaSで十分? それとも自社専用に開発すべき?
- 業界・業務別に見る、生成AI活用の傾向と可能性
- 上司が生成AIを使っていないと自分も使いづらい
「RAGって、実際どうなの?」
RAGに関しては、価値のあるデータを入れることが重要で、まずはチャットボットや社内にユースケースを作ることから始めるのがおすすめとのこと。また、RAGは万能ではないので、ユーザーの期待値を合わせることが大事になってきます。
「生成AI活用はSaaSで十分? それとも自社専用に開発すべき?」
SaaSは自動で仕様がアップデートされ、自社開発は都度アップデートが必要なので、それぞれにメリット・デメリットがあります。例えば、SaaSは社内活用、自社開発は自社サービスに活用するなど、二軸で考えると良いでしょう。
「業界・業務別に見る、生成AI活用の傾向と可能性」
業種別で生成AIの導入・活用状況を見てみると、下記の業種が特に進んでいます。
- ソフトウェアや情報サービス業
- 保険業
- 電気通信業
- 金融業
上記の4つが成長産業で特に進んでいるという見方もあるかもしれませんが、最近はマルチモーダル(動画や音声など)でテキストを越えた使い方が広がっているので、少しずつ変わってくる可能性もあります。
「上司が生成AIを使っていないと自分も使いづらい」
上司や職場環境の影響は、少なからずあると思います。生成AIの認知・利用率は、10〜20代で20%を超えていますが、30代以降は15%以下になっています。ただ、20代若手社員の生成AI活用は、7割近くがまったく・ほとんど活用していないという調査結果もあるので、世代を越えて生成AIに慣れる・向き合っていく姿勢が大事です。
参加された方々のほとんどは生成AIを活用されていましたが、生成AIを業務に導入・連携できている方は2〜3割ほどでした。社内向けに導入し、社内データの活用や顧客向けの活用に課題があり、まずはここから進めていくことで、今後のビジネス展開・創出が広がっていくのではないでしょうか。
ネットワーキング
セミナー終了後は、登壇者やご参加いただいた皆さまと名刺交換や自由に意見交換ができる時間もセッティング。AI活用の具体的な課題や疑問を直接相談できる機会として、ご活用いただきました。
参加者の声(アンケート回答)
ご参加いただいた皆さまに、アンケートに答えていただきました。活用推進をする上で、社内で課題と感じていることを聞いたところ、1番多かったのは、社内人材・スキル不足。次に多かったのは、セキュリティやガバナンスの不安、業務との連携方法が不明瞭でした。
また、関心のある生成AIのテーマ・技術領域についても聞いたところ、1番多かったのは、社内ナレッジ連携(RAG)による検索強化で、次に多かったのは、業務システムやSaaSとの連携でした。
活用推進に対する人材・スキル不足やセキュリティ・業務連携に課題がありつつ、生成AI活用・連携への関心が高いことが、回答結果からもよくわかると思います。アンケートにご回答いただいた皆さま、ありがとうございました!
「ちょっと試してみた」から「ビジネスの戦力」へ、本セミナーをきっかけに生成AIを実務で活かすためのポイントを押さえ、業務に活用していただければ幸いです。
生成AIによって、新しい時代がやって来ています。AIリテラシーを身につけ、今後の日本社会を一緒につくっていきましょう!
生成AIの導入・活用に関心がある企業の担当者や経営層の方で、何か課題や問題を抱えていらっしゃいましたら、先行利用層への伴走支援、そして新システム導入後の定着支援が得意なFusicへ、ぜひ気軽にお問い合わせください。
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