MENU

STORIESお客様の声

導入自治体数100以上、ダウンロード数延べ150万人! プレミアム付き地域商品券アプリをひとつのチームとして共に育てた歩み 株式会社まちのわ

2024.07.10

スマートフォンアプリ



株式会社まちのわ

https://www.machinowa.co.jp/


開発事例

https://fusic.co.jp/works/60


インタビュイー:

 矢野 恒 様

 山根 一高 様


プロジェクト開始当時の状況や課題感

矢野様)Fusicさんには、プレミアム付き地域商品券をスマートフォンアプリで発行するプラットフォームの開発に伴走いただいています。2020年の福岡県うきは市での初回リリースから、2024年時点で導入自治体数100以上、ダウンロード数延べ150万人を超える多数の実績を有するプラットフォームにまで成長しています。

このプレミアム付き地域商品券アプリのプロジェクトは、SBIホールディングス株式会社、九州電力株式会社、株式会社筑邦銀行の共同事業としてスタートし、今では3社の合弁会社である、私たち株式会社まちのわが運営しています。

従来の地域商品券は紙で発行されており、運用に非常に手間がかかっていました。申し込みおよび抽選時の往復はがきの印刷や発送・回収、そして商品券の発行や換金といった業務を手作業で行っていました。登場人物も、商工会や加盟店、銀行といった様々な立場の人がおり、複雑です。また、商品券はお金と同じ扱いになるため、厳重な警備が必要ですし、数え間違いなどミスが起こってはいけません。これらの業務をシステム化することで、作業負荷の軽減やセキュリティの担保が実現できると考えました。

新規事業としてスタートしたため、ビジネスとして成立するのか手探りの状況からプロジェクトが始まりました。初回リリースのうきは市への提供もスケジュールが先に決まっていたので、大急ぎで開発を進めたことを覚えています。


Fusic浦田)私は開発の初期フェーズからメンバーとして参画させてもらいました。アイデアと簡単なワークフローだけがある状況から、まちのわさんと議論を交わしながら要件を固めていきました。



開発した地域通貨アプリとはどういったものか

Fusic浦田)開発したスマートフォンアプリは、簡潔に言えばQRコード決済アプリの地域商品券版です。当時はちょうどQRコード決済が世の中に広まっていくタイミングだったので、ユーザーに直感的に利用してもらうことができました。

管理側には、地域商品券ならではの機能があります。例えば、申し込みと抽選、当選したユーザーからの入金、加盟店の取り扱い、換金精算といった機能です。


山根様)他に、「地域ごとの専用アプリ」と「券種の複数取り扱い」は、まちのわの特長として売りにしていたポイントでした。自治体ごとに独立したアプリとして提供しているため、ユーザビリティが高く、さらにオリジナルのデザインにすることができます。券種の複数取り扱いとは、例えば、全店舗で利用できる共通券と中小規模店舗のみで利用できる専用券を発行するというものです。この機能を提供している事業者は当時あまりいませんでした。


矢野様)地域ごとに専用のアプリとしてサーバーも分けて提供している点は、その後の事業展開においても重要でした。それぞれの自治体独自の工夫をこらした「その町のアプリ」として、地域と人をつなぐプラットフォームになったからです。これはお客さまに喜ばれるポイントですね。




100以上の自治体へと広がっていく道のり

矢野様)事業拡大の追い風となったのは、コロナ禍をきっかけに急速に進んだキャッシュレス化の流れです。国や県もキャッシュレス化を推奨したタイミングで、時の運を上手く掴んだと思います。紙の地域商品券と違い、並ばずに購入し非接触で決済ができるこのアプリは当時のニーズにマッチしていました。

うきは市のリリースの頃にはもう次の導入も決まって、それからは毎月のように新たな自治体が増えていきました。


山根様)地域ごとの専用アプリとして提供しているので、それぞれの要望を柔軟に反映できる点も評価されているポイントだと思います。もちろんすべてを叶えられるわけではないのですが、プッシュ通知の機能をカスタマイズしたり、給付事業やふるさと納税事業に必要な機能をこのアプリに追加したりなど数多くの要望を実現してきました。

提供地域が増えれば増えるほどノウハウとともに機能のラインナップも蓄積され、「その要望に対しては、この機能を活用して、すぐに実現が可能です!」と、応えられる要望の幅とスピード感が向上し、開発要望のあった地域だけでなく、多くの地域で活用され喜ばれるという好循環になっています。





まちのわ様とFusicの関係

矢野様)Fusicさんとは、発注側と受注側という関係ではなく、「同じチームで一緒に作っているんだ」という意識を強く持っています。プロジェクト開始時からチームメンバーも増え、今ではまちのわが20名程度、Fusicさんが10名程度の体制で運用を行っていますが、新たに入ってくるメンバーにも、その意識を伝えていくことを大切にしています。


山根様)Fusicさんに機能の開発をお願いする時には、その機能がなぜ必要なのかの背景を一緒に伝えるように、とまちのわメンバーに言っています。Fusicさんは、「そのニーズであれば、すでにあるこの機能を活用してはどうでしょう」とか、「その仕様では開発工数が大きくなるため、こう仕様を変更してはどうですか」など、背景を読み取った上での提案をしてくれるのでとてもありがたいです。


Fusic山路)僕たちも「本当に使われる機能」を作りたいと思っているので、背景をしっかり捉えることをとても大切にしています。特にこのプロジェクトではまちのわさんが自治体等とのコミュニケーションを担ってくれているので、そこで見えている景色をFusicに共有してもらい、チームとして一緒に考えさせてもらえるのはとてもありがたいです。感覚としては同じ会社の営業とエンジニアで会話をしているくらいの近い距離感です。


山根様)それでいうと、まちのわとFusicさんで「合宿」もしたことがあるんですよ。地域商品券アプリのプロジェクトが軌道に乗ってきたタイミングで、今後取り組む新たなビジネスアイデアを生み出す場を設けたいと思って、そこにFusicさんをお誘いしました。初回リリースの思い出の地であるうきは市の会場を選んで、和気あいあいと楽しい時間を過ごしました。いつもの打ち合わせとは違って、深く議論することもできて貴重な機会でした。卓球やUNOもしましたね……(笑)、ここまで来るともう一心同体です。
そこで生まれたアイデアは、今まさにFusicさんと共同で事業化検討に取り組んでいるところです。



多種多様な自治体事例

矢野様)自治体の要望に応えていく中で多種多様な事例が増えて、最近だと他の自治体の視察に行ってみたいというご依頼をいただくほどです。

最近で印象に残っている事例は、カード版の地域商品券による、オール電子化の実現です。スマホの利用が難しい方向けに、QRコードが印刷されているカードを発行し、加盟店がそのQRコードをアプリで読み取れば決済が可能です。それまではどうしても紙の地域商品券を一部発行しなければならなかったのですが、このカード版によりスマホを利用できない人でも同じシステム上で決済処理をすることができ、紙の地域商品券の発行が不要になり、オール電子化が実現しました。紙の発行を完全になくす自治体も続々と出てきています。


山根様)ほかには、マイナンバーカードでの本人確認および市民証明を活用した事例もあります。これは、その認証をほかのアプリとの連携ではなく、地域商品券アプリ内で認証するため、このアプリだけで認証から申し込みまでが完結できるんです。高齢者などスマホの操作に慣れていない方も使うアプリなので、機能をどれだけシンプルにできるかは重視しています。


矢野様)地域ならではの事例として記憶に残っているものは、能登半島地震の際に急遽「寄付アプリ」としてリリースしたことです。金沢大学と共同で地域通貨の実証実験を進めていたときに震災が起こったため、急遽仕様を変更し、プレミアム率をマイナス100%に切り替えた寄付アプリとして作り直すことになりました。

震災前は外国人観光客をターゲットにしたアプリとして多言語対応などを準備していたのに、震災によって観光どころじゃなくなり、「多言語対応やめます」と、せっかく開発した機能が使えなくなってしまい……。そんな急遽の要望にもFusicさんには柔軟に対応いただき、ありがたかったです。


Fusic政谷)地域振興や寄付といった社会に貢献するアプリに自分が携われているのは、とてもモチベーションになっています。ひとつひとつの機能を「もし自分が使うなら?」と想像しながら開発しています。





運用体制について

山根様)100の地域それぞれにアプリがあり、昨年でいうと1年におよそ40もの地域に新規導入しているため、単なるアプリ・システム構築ではなく、スムーズかつスピーディに複数のアプリをリリースしたり、パッチを短期間で同時多数に適用したり、高パフォーマンスを実現する体制づくりと運用の最適化も非常に重要になっています。


Fusic吉野)開発事例にあるように、選定した技術要素は開発サイクルの効率化にかなり寄与していると思います。他には、ワークフロー自体の見直しも重要でした。画像のサイズ調整といったタスクもひとつなら小さなものですが、数が増えるとかなりの業務量になるので、そういったタスクの整理を行いました。まちのわさんはそういったタスクも積極的に協力してくださるのでとてもありがたいです。


山根様)エンジニアにしかできない仕事に専念してもらうために、できる限りの協力をしていきたいと思っています。既存のアプリを運用しながら、追加開発をして、新しいアプリをリリースするという3つを並行するために「どう効率化していくか」を考えるのは本当に重要ですよね。


矢野様)最近だと、開発の週次定例は30分ぐらいで終わるのに、運用の定例は議題が多すぎて1時間では終わらないくらいです。コストを下げる、障害を減らす、パフォーマンスを向上させる、といったところにチームとしての課題感が変化していることを感じます。


Fusic吉野)お客さまはFusicに発注するとき、やはり初期開発に意識が向くと思いますが、運用によってシステムを守り、育てていくことは初期開発以上に大切だと考えています。
このプロジェクトにおいては開発も同時に動いているので、開発のスピードを保ちながら運用も良くしていくことは、エンジニアとして試されるところだと感じています。バージョン管理、監視、属人化からの脱却など、やらなければならないことはたくさんあります。


Fusic山路)アプリの数も多く、関係する人物も多いため、このプロジェクトでは特に「見える化」を意識しています。それは新たに作る機能がイメージに合っているかどうか見える形で確認してもらったり、対応した内容をログとして残していったりなど、開発・運用どちらにおいても意識できることです。すれ違いのない、スムーズなやり取りにつながっていると思います。



まちのわ様の今後の展望

矢野様)これからの事業展開において、同じことをやり続けていては成長ができないと思っています。既存の地域商品券アプリを続けながら、さらに事業を育てるアイデアに着手していきたいと思っています。Fusicさんは実験的な取り組みにもアイデアの段階から伴走してくれるので、とても助かっています。

まちのわの軸である『地域に根ざしたアプリ』という視点を大切にしながら、自治体や商工会・企業とアプリの利用者をつなぐための新たな機能を増やしていきます。


山根様)プレミアム付地域商品券の購入と利用が、アプリをインストールしてもらうための良いきっかけとなり、そこを起点に新たな繋がりが生まれていく形を目指していきたいです。日常のあらゆるシーンで使われるアプリになることで、期間限りの地域商品券ではなく、「地域通貨」という文化を生み出すことができると考えています。


矢野様)この地域商品券アプリは、まちのわとFusicさんがひとつのチームとして歩んでこれたからこそ、ここまで大規模な事業になったと思います。まちのわもFusicさんも、このプロジェクトを経たことで、企業として大きく成長することができました。これからも寄り添い合い、互いを高め合っていく関係でありたいですね。