現場の声を反映したリニューアルが、同業他社からも評価されるDXクラウドサービスに進化
- インタビュイー
株式会社現場サポート 常務取締役 開発本部長 川畑様
- プロジェクト担当
エンジニア 岡嵜
▼今回の開発事例
建設業向けクラウドサービスを展開する、株式会社現場サポート様。同社の「現場クラウド Arune(アルネ)」は、2025年6月に大幅リニューアルし、重機管理システムから「現場リソース管理システム」へと進化しました。
今回はプロダクトデザイナーがリニューアルの初期段階から参画し、設計フェーズごとに細かく擦り合わせて具体的にシステム開発へ反映したことで認識のズレを防ぎ、効率的にユーザーに寄り添った体験設定を実現。リニューアルの背景から開発プロセス、成果や今後の展望まで、詳しくお話を伺いました。
スピード感を重視した初回リリースから得られた気づき
―:2023年の初回リリースを振り返ってのご感想をお聞かせください。
現場サポート様:
プロジェクトが始まった当時、弊社にはIoT(※)に関する知見が全くありませんでした。お客さまに「自社の重機がどこの現場にあるか把握できなくなる」という課題感があり、Fusicさんと一緒に解決策を考えました。
初回リリースで感じたのは、Fusicさんの対応スピードが素晴らしかったことです。2022年に開始して、2023年に初回リリースできたことは、未知の領域からスタートした我々にとって、本当にありがたかったです。
※IoT(Internet of Things:モノのインターネット)
様々な「モノ」をインターネットに接続し、データ収集、交換、分析を行うことで、新たな価値やサービスを生み出す技術。
Fusic エンジニア:
何もない状態から開発を始めたので、その過程が見えないと現場サポート様は不安に思うだろうと常に考えていました。「目に見えて動くもの」を早く出して、現場サポート様のフィードバックをもらいながら、プロダクトを成長させることを意識していました。
―:初回は、デザイナーがまだ入っていなかったのですね。
Fusic エンジニア:
順番としてはイメージの共有を図るために実際に動くものをお見せして、リリースの目処が立ったタイミングで、UI/UX(※)も多少は意識してというところで、デザインの仕上げに入ってもらいました。
※UI(ユーザーインターフェース)
製品・サービスとユーザーとの接点である「見た目や操作性」
※UX(ユーザーエクスペリエンス)
製品・サービスを通じてユーザーが得る「総合的な体験」
ーーーーーーーーーーーーーー
▼前回の開発事例
重機の位置や稼働状況が把握しづらいという課題に対し、インフォコーパス社のIoTプラットフォーム「SensorCorpus」やAWSを活用。サーバーレス構成と時系列DBでデータ処理・可視化ダッシュボードを実装。現場サポート様と頻繁に打ち合わせしながらスピーディに開発し、台数増加にも耐える安定性と使いやすいUI/UXを実現。
▼詳しくはこちら
ーーーーーーーーーーーーーー
お客さまの声から生まれた、リニューアルへの舵切り
―:今回のリニューアルに至った背景や経緯について、お聞かせください。
現場サポート様:
初回リリース後に、お客さまから様々なフィードバックをいただきました。特に多くいただいたのは、「重機だけでなく、現場に関するあらゆるリソース(人や測量機器など)を適切に管理し、計画を立てたい」という内容です。
IoTを前提としたサービスで考えていましたが、それだけにこだわっていると、元々やりたいこととズレるかもしれないという議論がありました。人や測量機器を管理しようとした時、必ずしもセンサーが必要なのか? という疑問もあります。
当初はセンサーありきで考えていましたが、お客様との会話を通じて、現場ではIoTが直接関わらない機能のニーズが段々と見えてきたので、「現場ごとのリソースを適正に管理し、計画を立てる」ことをコンセプトに盛り込みました。
▼参考:現場サポート様のリニューアルに関するプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000077004.html
プロダクトデザイナー参画による、仮説検証サイクルの改善
―:今回のリニューアルで、デザイナーが最初から関わったことで、どんな変化がありましたか?
現場サポート様:
仮説検証が格段に早くなりましたね。現場のリソース管理なので、あらゆる情報の中からパッと見て、いかに分かりやすくするかが非常に大事でした。特にログイン直後のホーム画面や配置計画で、どのような見せ方をして操作性を追求するかが、リニューアル成功の大きなポイントだと考えていました。
漠然とした言葉で要望を出すこともあり、デザイナーさんに最初にシステム全体の流れや設計、画面のイメージ等を見せてもらうことで、議論が深掘りでき、早いタイミングで軌道修正ができました。
ユーザーの業務やシステムを使用するフローを整理したチャート
Fusic デザイナー:
要件を反映したデザインが形になるまでには時間がかかるので、後から認識のズレが判明すると、関係者全員にとって大きなロスになります。一つひとつ「まず大枠はこういうイメージ・方針で合っていますか」と、具体的に示しながら目指す方向を一緒に揃え、段階的に擦り合わせを進めました。
開発に携わっている皆さんが時間を割いてくださり、打合せの機会を多くいただきました。チャットでのやり取りも、いつもすぐにご返信いただけたので、手を止めることなく速いスピードでサイクルを回せて良かったです。
先ほど「漠然とした言葉」とおっしゃっていましたが、実際にシステムを利用する現場のユーザーが普段見ているダッシュボード画面の写真や、現場の方が重視している情報を数多く共有いただき、最初の叩き台の精度も上がりました。
―:早い段階から様々な情報を可視化して認識を合わせることで、効率的に開発を進められたということですね。
実現したいアクションに必要な情報を擦り合わせるイメージ図
展示会で同業他社も注目する製品へ
―:リニューアル後の成果について、お客さまからの評価や展示会での反応はいかがでしたか?
現場サポート様:
建設業向けの国内最大級イベント「CSPI-EXPO 2025」では、同業他社の方から「この画面のレイアウトいいですね」という声をいただきました。また営業面では、以前と比べて受注率が格段に上がっています。
「Arune(アルネ)」のライバルは、建設業で使われている業務用ホワイトボードだと考えています。アナログなツールで現場の圧倒的なシェアを占めているので、手強いところですね。導入へのハードルという点で、お客さまの声を聞きながらさらにブラッシュアップしていきたいと考えています。
最近は、問い合わせや相談も格段に増えています。社内のコミュニケーションツール「現場クラウド Conne(コンネ)」を見ても、以前はほとんど見かけなかった「Arune(アルネ)」に関する問い合わせや相談が、最近では1日に1〜2件ほど上がるようになりました。商品自体の魅力が向上したと感じています。
株式会社現場サポート 常務取締役 開発本部長 川畑様
ホワイトボードを意識した、UI/UX設計
―:ホワイトボードがライバルというお話が出ましたが、開発時に意識されていましたか?
Fusic デザイナー:
普段ホワイトボードを使っている人が「システムを使って」と言われると、抵抗を感じることがあります。システム画面を見た時に「全然違う世界」と思われないよう、”既視感”を持ってもらえるような画面設計を心がけながら、システムならではの操作も盛り込んで全体の体験を設計しました。
リニューアル後のシステムでは、重機や機材といった現場のリソース配置計画を簡単に変えられます。システムだとオンラインですぐに共有できるのがメリットですね。
配置計画の画面例
プロフェッショナルが集結したチーム体制
―:今回のプロジェクトチームについて、お聞かせください。
Fusic デザイナー:
今回のプロジェクトは、まさに各分野のプロフェッショナルが揃った形だと思います。エンジニアの岡嵜はシステムを作るプロフェッショナル、現場サポート様はユーザーである現場で働く人たちを理解するプロフェッショナルです。
各分野のプロフェッショナルが一緒に会話を交わしながらプロダクトに向き合い、ビジネス・技術・ユーザーの視点から多角的に検討を重ね、それぞれのベストパフォーマンスを発揮することができました。
効率的な開発プロセスを支えた、デザインツール
―:今回、Figma(※)などのデザインツールも活用されたそうですね。その狙いを教えてください。
※Figma(フィグマ)
Webブラウザ上で、デザインやプロトタイピングを行うためのコラボレーションデザインプラットフォーム。Webサイト制作等で活用されている。
Fusic デザイナー:
FigmaとFigJamというオンラインのデザインツールを活用し、打合せで議論の内容をタイムリーに可視化して認識を合わせながら検討を進めました。後日、内容をまとめたデザインを改めてURLで共有してご確認いただく流れで進行し、オンラインですぐにフィードバックをいただける体制で、開発も素早く進められました。
実際の作業では、画面設計に入る前に必要な過程(現場の業務理解やシステムを利用する際の導線・フローチャートなど)もデザインツールで可視化して議論し、そこから具体的な画面を設計してチェックいただき、しっかりとイメージの共有を図りました。
より具体的なUIの挙動や画面遷移を可視化した図
Fusic エンジニア:
最初の上流フェーズは、エンジニアにとって難しい部分です。動くものや形に見えるものがあってから議論するのは得意ですが、そこに至るまで手戻りが多少あります。最初に可視化してもらったのはすごく助かりました。
Fusic デザイナーの礒谷(左)とエンジニアの岡嵜(右)
Fusicのブランドスローガン「OSEKKAI × TECHNOLOGY」の体現
―:Fusicはブランドスローガンに「OSEKKAI × TECHNOLOGY」を掲げていますが、良い意味でおせっかいを感じた場面はありますか?
現場サポート様:
プロジェクトに同じ目線で参画いただいていることを強く感じています。
打合せでシステム以外のこと(ホワイトボードやプロダクト戦略など)も色々話しましたが、Fusicさんはしっかり向き合って理解しようとしてくださり、理解した上で一緒に考えてくださいます。
そこが良い意味でのおせっかいだと感じており、非常に助かっています。上流の検討から参画いただいているので、やり取りがスムーズになるだけでなく、「こうした方がより良いのでは」というご意見やご提案もいただき、プロダクトの完成度がより一層増している実感があります。
一緒に仕事をしていて、弊社だけでなく、その先にいる弊社のお客さまのことも考えてくださり、私たちと同じ方向を向いてくださっていることがとても心強いです。
Fusic コーポレートロゴ
(ふたつの飛行体は、テクノロジーによって成功を果たすお客さまと、そのために伴走するFusicの姿でもあります)
今後の展望とFusicへの期待
―:今後、Fusicに期待することはありますか?
現場サポート様:
「引き続き、ぜひともお願いします!」ということに尽きます。
「Arune(アルネ)」はまだ生まれたばかりで、一緒に育てていただけるとありがたいです。今後の展望としては、IoTの要素もまだまだ絡められる幅があると思うので、知見が豊富なFusicさんのお力を借りながら成長させていきたいです。
インタビューを終えて
今回のインタビューで特に印象的だったのは、「仮説検証が早くなった」という現場サポート様のお言葉です。プロダクトデザイナーが上流工程から参画し、一つひとつ細かく確認を重ねることで、手戻りを最小限に抑えながら、ユーザーのニーズに応える製品を短期間で完成させることができました。
また、ホワイトボードのようなアナログツールの使い心地を意識したUI/UX設計により、建設現場で働く方々にとって親しみやすく、かつシステムならではの利便性を提供する製品へと進化させることができたのも大きな成果でしょう。
現場サポート様の「Arune(アルネ)はまだ生まれたばかり」という言葉の通り、さらなる進化を遂げていくことが期待されます。建設業界のDXを支える重要なツールとして、今後の展開に注目していきたいと思います。